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『関西芸術座 No.3』 1957年この冊子も、四天王寺の古本祭りで見つけたもので、早川良雄がデザインしたパンフレットと同じ均一台にあったものだ。 表紙の絵に魅かれて確認してみると、なんと意外にも作者は鴨居玲(かもい れい)であった。 鴨居玲(1928-85)は、北国毎日新聞記者であった父親の赴任地・金沢(一説によると大阪)で生まれ、金沢、ソウルで小学校時代を過ごした後、大阪に移り、1940(昭和15)年、関西学院中等部に入学。その後、再び金沢に転居し、1946(昭和21)年に金沢美術工芸専門学校に第一期生として入学、宮本三郎に師事。 1952(昭和27)年に西宮へ転居した後は、神戸やその近郊を拠点にし、田村孝之介が率いる六甲洋画研究所や神戸・二紀会などを中心に制作活動を行っており、この表紙の絵はその頃のものである。 1959(昭和34)年に渡仏。そして1969(昭和44)年には「静止した刻」(下図)により、具象絵画の登竜門である安井賞を受賞。主にこの作品のように社会や人間の闇を描いた画家であった。 しばしば、新天地を求めてパリ、南米、スペインなど海外に中長期滞在しつつも、1985(昭和60)年に急逝するまで、国内では神戸を生活と創作の拠点にしていた。 ◇「静止した刻(とき)」1968(昭和43)年 なお、姉の鴨居羊子は下着ブームの火つけ役を果たした下着デザイナー。 余談になるが、早川良雄は鴨居羊子の下着ファッションショー「チュニックショー」の演出・舞台デザインを手がけている。 さて、1957(昭和32)年11月15日発行のこの季刊誌『関西芸術座 No.3』(12ページだけのものだが…)の内容であるが、この年にラジオドラマ作品『つばくろの歌』で芸術祭文部大臣賞戯曲部門を受賞(次席は井上ひさし)、また関西芸術座で戯曲「虫」を発表するなど鮮烈なデビューを果たした、若き日(23歳)の藤本義一が大きくクローズアップされている。 巻頭には、藤本義一・作である関西芸術座公演の「虫」(下図・上)と「つばくろの歌」(下図・下)の舞台写真が掲載されている。 他にも、この年に『暖簾』を刊行して作家デビューし、翌年に『花のれん』により第39回直木賞を受賞した山崎豊子と関西芸術座の女優との座談会「女であるということ -女優と生活-」が掲載されている。 この当時は、まだマス・メディアによる文化の東京一極集中が行われる以前であり、まだまだ、関西の文化活動も元気だったことが伝わってくる…。
by suzu02tadao
| 2012-10-17 13:20
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