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レコード・パンフレット<1930年>今年最初の古書の買い物は、以前とりあげた昨年最後の買い物と同じく矢野書房であった・・・といっても、紙ものなのだが…。 今度は古書市ではなく、天神橋の店先で、雑誌や同人誌など雑多なものが入った段ボールの箱を、なにげなく覗くと見覚えがある女性の顔のイラストがあって、興味をそそられて購入したのが、1930年のポリドール・レコードのパンフレットであった。 『現代思想』1979年6月臨時増刊号「総特集・1920年代の光と影」には、海野弘をはじめ山口昌男、多木浩二、池内紀、種村季弘、常盤新平、淀川長治など錚々たるメンバーが執筆しているのだが、この雑誌の表紙になっているのがこの女性の顔のイラストであり、オリジナルはデンマークの作家、スヴェン・ブラッシュ(Sven Brasch 1886-1970)がコペンハーゲンのカジノのために作成したポスターで、1920年代を代表する作品のひとつといわれている。 このイラストは当時のカフェのマッチラベルなどにも見られ、時代の先端をいくモダンガールのイメージとして広く使われていたようだ。 同じ箱には他にヒコーキレコードのパンフレットもあり、こちらの表紙も流行の先端をいくアールデコ調のデザインになっている。 ヒコーキレコードは帝国蓄音器商会のレコードレーベルで、1912(大正元)年にヒコーキ印として登録されており、これはライト兄弟の初飛行から9年目で、まさに時代の先端をレーベル名とマークに採用したことになる。 ヒコーキレコードは1921(大正10)年には、後のコロムビア・レコードの前身である日本蓄音器商会(ニッポノホン)の傘下となり、1925(大正14)年に設立された合同蓄音器㈱のレーベルとなったが、1932(昭和7)年、合同蓄音器㈱が解散となると共にレーベルも消滅している。 この当時のレコード業界は、今日のIT業界と同じように最先端のハイテク産業であり、コロムビア、ポリドール、ビクター等の大手の他に零細インディーズメーカーによるレーベルもたくさんあり、技術革新に伴う外国資本の導入などで、著しく変動していたようだ。 そのような時代状況が、これらのパンフレットの表紙のデザインにも表われているといっていいだろう。
by suzu02tadao
| 2013-01-11 12:05
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