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「カンカン虫は唄ふ」

◇楽譜「カンカン虫は唄ふ」1931(昭和6)年4月25日発行
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 作詞は花柳小説家としても有名な長田幹彦(1887-1964)。
 作曲は松平郷松平家第20代当主ということで「殿様作曲家」と呼ばれた松平信博(1893-1949)が手がけています。

1.世界五大州 果てから果てへ 船は浮気な 吹く風次第
  帰るねぐらの この浮寝鳥 港みなとの 潮垢おとす
  カンカン虫は可愛いゝね 煤で黒うても よいをとこ。

2.一度手がけりや 忘れぬお前 野暮なドックで また逢ひ戻り
  錆をおとして 紅かねつけりや 出船別れの 名残りが惜しい
  カンカン虫は可愛いゝね 煤で黒うても よいをとこ。

3.煙る野毛山 横浜港 町の月夜にや 恋しいあの子
  踊る手振りも 夜ごとの夢に 惚れて悪けりや 笑をとまゝよ
  カンカン虫は可愛いゝね 煤で黒うても よいをとこ。

4.海で果てるは 前世のえにし 渡るこの世は 波風まかせ
  空にや日が照る 明るい雲に  唄をきかせて 月日を暮らす
  カンカン虫は可愛いゝね 煤で黒うても よいをとこ。


 この曲は、1931(昭和6)年5月に公開された日活映画「カンカン虫は唄ふ」(監督:田坂具隆)の主題歌だったものです。
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 この楽譜は、2年くらい前に、ヤフオクでわりと安く落札したもので、それからはずっと仕舞いこんでいたのですが、少し前に、この映画の原作となった戦前の吉川英治著『かんかん蟲は唄ふ』を手に入れて、読んでみたところ、これが、とても面白くてビックリでした・・・

◇吉川英治著『かんかん蟲は唄ふ』(昭和10年 8版)日本小説文庫 春陽堂
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 <「食へない者は、誰でも、おれに尾(つ)いて来な、晩にゃ、十銭銀貨(ワンダラ)二ツ、白銅一個を進上するぜ」
 かんかん蟲のトム公は、領土の人民を見廻るやうに、時々、自分の住んでゐるイロハ長屋の餓ゑをさがした。
 で、彼は、貧民街の同胞たちから、長屋のプリンスの如く人気があった。二年や三年食ひはぐれて見ても、外国のやうで日本のやうで、金儲けで埋つてゐるやうで、金を損(す)らせる坩堝(るつぼ)のやうで、得体のわからない貿易港から、ふしぎにもよく仕事のアナを探って来る彼は天才だった。>


 「かんかん蟲」とは、長い航海を終えて港のドックに入った船の、船腹のついた錆びや貝がらを取り除く作業をする職工の俗称で、ハンマ-で船腹をカーンカーンと叩く音から、このような呼び名になったようですが、最初から、上記のように軽妙な文章が続くので、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。
 この作品は横浜出身者である吉川英治の自伝的小説でもあって、特権階級の居留外人が練り歩いていた阿片窟のような横浜中華街など、100年前の身分の差や貧富の差が歴然とあった社会を舞台に展開しており、現在との時代のギャップもあって非常に面白く感じました。
 吉川英治は『宮本武蔵』などの時代小説で、幅広い読者層を獲得し、「国民文学作家」と称されましたが、あんがい現代ものを書いても話題作を書けたのではないかと思います。

 そんなふうに思っていたら、この間も古本市で、戦後に出たこの本の別バージョンを見つけたのですが、表紙が気に入って、ついついジャケ買いしてしまいました・・・

◇吉川英治著『かんかん蟲は唄ふ』(昭和22年 初版)吉川英治選集1 早川書房
(装幀:住川雅鴻)
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 なお、映画作品としても、戦後の1955(昭和30)年8月に、大映がリメーク(監督:三隅研次)しており、その時の主役は勝新太郎で、主題歌(萩原四朗詩・大久保徳二郎曲)も歌っています。また、この映画には妹役で後に妻になった中村玉緒さんも出演しています。
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by suzu02tadao | 2014-05-11 14:40 | Comments(0)
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