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1920~30年代を中心に、あれこれと・・・
by 大阪モダン
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嫁入叢書「趣味篇」

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 杉浦非水(1876-1965)の装幀が気に入ってジャケ買いした『嫁入叢書 趣味篇』です。
 表紙と見返しに「ひすゐ」サインがあります。
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 この本は、1930(昭和5)年に発行されたもので、
< 新しき家庭に無くてはならぬ嫁入叢書。
 結婚せんとする若き女性に最高度の家庭教養と知識とを与ふべく当代各方面の権威者其専門を傾けて嫁入叢書全十五巻ここに成らんとす。
 見よ堂々たる其威風を!>

 と、執筆陣は充実していて、内容も、例えば「洋画の見方」石井柏亭(1882-1958)では次のように記されているように、なかなか本格的なものです。

< それでは、絵とはなんであるかといふに、線と形と色の配合といふことがその本領であります。
 例へばこゝで、一つの風景を写生するとします。その場合、真に迫つてよく描いてさへあれば、どこのどんな景色を描いても面白いといふものではありません。線と形と色の配合のよい風景を、切りはなして以つて来るところに価値があるのであります。
 ですから、写生画といへども決して真を写せば足りるといふやうなものではありません。そこに線と形と色の配合の美がなければならないのです。
 この美がなければ、いかに真を写しても、絵としての価値はありません。>


 他にも、「日本画とはどういふものか」平福百穂(1877-1933)、「短歌のよみ方」吉井勇(1886-1960)、「民謡とはどんなものか」野口雨情(1882-1945)、「琴は日本女性に適した音楽」宮城道雄(1894-1956)、「オペラの話」伊庭孝(1887-1937)、「声楽」堀内敬三(1897-1983)、「ダンス」石井漠(1886-1962)などとなっています。

 そして、「テニス」の項では、全米オープンでの錦織圭選手の活躍で、にわかに注目を浴びた熊谷一弥(1890-1968)が次のように書いています。

< なにしろ我が国の軟球テニスは、輸入以来三十年に近い歴史を以つてゐるのでありますが、テニスの本来そのものが硬球であるのだし、かつ、対世界的な関係からも、私は一日も早く総ての婦人も硬球に走られる様祈つて止まないものであります。
 自分一個の経験によつても、軟球を去つて三ヶ月、硬球に親しんだら最後、軟球が恰も子供のテニスらしく、頼りないものである事を痛感した位でありました。>


 このような時代に、アントワープ五輪で男子シングルス、ダブルスともに銀メダルを獲得し、日本スポーツ界に初めてのオリンピック・メダルをもたらしたのですから、熊谷一弥はやはりスゴイ!ですね。

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by suzu02tadao | 2014-10-02 11:35
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