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1920~30年代を中心に、あれこれと・・・
by 大阪モダン
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「書窓」恩地孝四郎

「書窓」恩地孝四郎_c0239137_15144879.jpg
 昨年末の「全大阪古書ブックフェア」で、以前から欲しいと思っていた1冊を手に入れることができたと書きましたが、それがこの『書窓』No.14(昭和11年7月号)です。

 恩地孝四郎が志茂太郎の協力を得て編集刊行した伝説の雑誌『書窓』は、今まで、たまに古書市で見かけることはあっても密封されていて、内容までは確認できませんでしたが、今回はページを繰って内容を見ることができたため、より一層興味をそそられて…また上図のとおり若干難ありなこともあって、大変リーズナブルな価格で手に入れることができたのでした。

 恩地孝四郎については以前にも、単に版画家とか、写真家という枠組みでは捉えきれない、様々なメディアを駆使してマルチに創作活動を行う、今日の現代美術家の先駆者だったのではないかと書きましたが、まさにこの『書窓』は、当時の最新の印刷技術などを駆使した書物というメディアの可能性をいろいろと試みたものであったことが分かります。

 ここには、恩地が少し前に発刊した版画詩文集 『季節標』についての感想を募ったものを載せていますが、津田青楓、武井武雄、前川千帆、川上澄生、小穴隆一、有島生馬といった画家や版画家はもとより、百田宗治、日夏耿之介、上司小剣、宇野浩二、川路柳虹などの文学者のものも載せていて、興味は尽きません…


 そして、恩地はここにも「曇天」と題した詩を載せています。

いちめんの曇り空
心臓の内壁が遮断されて冷い
青葉がむしむしと湿気を食べ
芽のアンソシアンが波うつ

ボクの子供たちは教室に座つてゐる
A・TH - CH - SH -
B・∛2 × √32 =
C・AL(OH)3+3HCI =
D・Is rounded with a sleep

下道ぞひの瓦の下には家々が黙りこんでる
ガラスは無表情である

ボクはひそかにさぐつてゐる
皮膚のやうな音を


「書窓」恩地孝四郎_c0239137_15201467.jpg
 やはり、前回の池田満寿夫と同じように、恩地孝四郎もジャンルを超えて多彩に活躍した芸術家だったのですが、この当時の方が現在と比べてみても、芸術のジャンルの枠は変に固定化されていなかったようで、その意味ではむしろ可能性を感じます。

 次回もこの『書窓』の中から、興味をそそられた記事を取り上げてみたいと思います。
by suzu02tadao | 2015-01-11 15:30
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