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2017年 05月 22日 ( 1 )

昭和11年「未来の夢」

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 現在飛行機では不可能だとされてゐる、垂直上昇や空中停止が出来るやうになれば、人間の生活はいよいよ地上から空にも延長されることは確かである。
 そして一年でも二年でも空中に止まり、又時に気象や天候の加減によつて、位置、高度を自由に変へることが出来るやうになれば、空の生活は極めて安全で愉快なものであらう。
 もちろん燃料や、食糧、その他日常の必需品は低空に下りて釣り上げればよいし、又地上に用向きのある場合には、おーいと手をあげて空中間タクを呼べばよい。

 上のイラストは「空の文化住宅」と題されたもので、昭和11(1936)年の雑誌『家の光』9月号の特集記事「科学者の描く未来の夢」の中の一つです。
 ビルそのものが「天空の城ラピュタ」のように空中に浮かぶという大胆な発想には驚かされます。

 この「滞空ビル」は…
 ビルの上方に強力にして極めて軽量な機関(エンジン)で不断に回転される整調推進器(コントラプロペラ)によつて得る風力が卵形の外壁に添って流れ、環状翼に作用して浮力を得て、空中に浮かぶやうな仕掛になつてゐる。
 そして水平運動は下方の垂直推進器によつて行はれる。
 ビルの下方、円型に見えるのは着陸のための建築物である。

 「滞空ビル」には、下のイラストのように可動式のものもあるようで…
 これは左右の回転翼の角度を変へて前進、後進、垂直、いづれの方向にも動くことが出来る滞空ビルの一種である。

 「ロケット式成層圏旅客機」などのロケットの利用も盛んになって…
 太平洋横断も「ちよつと隣まで。」と、気軽に僅か数時間でできるし交通費も安くならう。

 外国行郵便物などは磁気誘導ロケットで安全急速に目的地に飛ばせることができるやうになつて、もはや、陸上、海上の旧式な交通は昔語りとして顧みられなくなつてしまふのではあるまいか。
 その頃は現今では不可能だとされてゐる推進器の音響除去装置なども、当然可能な時代に入つてゐるであらう。

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 最近では未来都市といえば、環境に配慮した構想が当たり前になっていますが、すでにこの当時、「緑の都会と文化的田園」が提案されています。

 人間は、太陽の光と、自然の緑とに接しなくては健康上、精神上堪へられなくなるが、大建築の屋上はいづれも青々と草木を茂らせ、僅かの空地や地下にさへ人口太陽灯の光で大庭園や草園が都会人の心に十分の潤ひと慰安とを与へるから、むしろ現在の無味乾燥なビル街より遥かに理想的なものになるであらう。

 又、都市の空気や川は常に空気及び水路浄化施設によつて清浄に保たれてゐるし、各種の発達した交通機関も不快な音響を立てて市民に過重の心労を与へたり、交通事故、作業能率の低下となるやうな原因を取除くだらう。

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 さすがに農村部を中心とした雑誌『家の光』だけあって、次のような都会と農村が一体になった斬新な構想も描かれていました…

 水利を完備し水田は平地のみでなく、一つの農作用建築物の各層に亙つて年中自由に必要なものの栽培が行なはれよう。家畜、家禽等もすべて立体的な飼育をするやうになるであらう。又絶壁などにも幾層ものコンクリートの柵を作り、こゝに米を植ゑることになるのではあるまいか。
 この時代には地面に栽培する以外には土壌を用ゐず農作物悉く水栽培によるから、栽培が簡単になるばかりでなく、多くの太陽光線も要求せず、又、必要によつては人工光線で補ふやうになるだらう。従つて作物の収穫も平均する。

 田園管理の簡易化は、農村人の富と知識の増進となり、都会と農村とが産業的に、生活的に、知識的に、正しい意味での文化的接近が遂げられると思ふ。

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 この他にも、エネルギー問題や人口増加に対応した食糧問題についても取上げていて、その当時の科学者が描いた世界が、下にあげた、ここ数年の間に提案されている近未来のイメージとほとんど同じような内容であることがわかります。

 さて、このように斬新で素晴らしいビジョンが描かれた、昭和11(1936)年は転機の年でもあったようです。
 日本では二・二六事件があり、また、ヒトラーがナチス・ドイツの台頭を世界に誇示したベルリン・オリンピックが開催される中で、その後、世界情勢はますます緊迫して行き、ついには第二次世界大戦へと突入していったのでした。

 これらの素晴らしいビジョンを実現するための科学技術は、兵器のために活用されることになり、その後の焼け跡からの復興では、経済効率だけを優先させた挙句、多くの公害問題を引き起こしました。
 そして…
 今世紀になったくらいからやっと、同じように環境に配慮した未来図が描けるようになったという次第です。

 なんとも遠回りしてきたものですね…

 それにしても、ここに描かれた世界は本当に近未来なのでしょうか…?
 まさか、また遠回り…!?

[ Urban Skyfarm ]
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[ Floating Responsive Agriculture ]
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[ 2050 Paris Smart City ]
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by suzu02tadao | 2017-05-22 10:00 | Comments(0)