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1920~30年代を中心に、あれこれと・・・
by 大阪モダン
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北尾鐐之助 -風景を切る-

 北尾鐐之助といえば『近代大阪』(昭和7年刊、創元社)が有名で、その写真と文章には定評があるところだが、写真家としての北尾が自身の写真に対する考えを著したものに、『風景を切る-カメラの美と旅-』(昭和27年刊、創元社)がある。
 本書の「あとがき」で、北尾は<私の写真画に関するささやかな文集の一つにすぎない。>と云い、挿入されている著者以外の作品は、<本書の上梓を聞いて、旧知諸氏から好意的に寄せられたものである。~日本の現写壇における巨匠の作品を網羅した自選画集のような形になった。>と述べているとおり、ここに掲載されているメンバーがすごい…。

◇入江泰吉「雪の東大寺」       ◇木村伊兵衛「水戸光子さん」
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◇土門拳「ぽんと町界隈」
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◇ハナヤ勘兵衛「夕餉」-ジャンジャン横町にて-
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 他には、塚本閤治、本庄光郎、小石清、西山清、河野龍太郎、上田備山、岡田紅陽、川崎亀太郎、河野徹、池宮清二郎、福田勝治、井深徹、小野由行、棚橋紫水、長谷川梅之助、相浦勝、紅村清彦、天野竜太郎、渡辺義雄、中藤敦、長浜慶三、北野邦雄、真継不二夫、佐保山堯海、永田二竜、と錚々たる顔ぶれだ。

 北尾は本書の中で、次のように述べている。
 <~写真画の本質とは、絵画の追随できぬ機械操作による現実の造形美、知性ある感覚がその焦点でなくてはならぬ。いまの日本の写真芸術は、あまりに視野が狭く、そこには人間及び生活の深い探求もなく、風景における季節感覚のすぐれた抽出もなく、風刺や比喩などの時代的・即興的な知性もまた、存在しない。題材は依然として、外来作品を真似た同じ繰返しにとどまっている。カメラはよろしく、もっと国民性に生きて、生きた風景感情、動植物の生態美、現実の社会性、人間性の解釈などへも、勇敢に突き進むべきである。>

 また、『近代大阪』は「近畿景観」の第三巻として刊行されたものであるが、
 <「景観」の文字は、近来、風景と同じ意味に使用されているが、この文字を、はじめて私が旧著「近畿景観」(昭和二年 第一巻)に用いて以来、風景と混同しないように、〈景観する〉とか、〈景観的には〉という風に、つとめて使用してきた。景観とは「眼に映ずる景色の特色と考えてよい」~「風景形態の厳密なる研究の意である」~などのごとく、単なる風景写真とは、その目的と性質とが異なっており、地形、林相、栽培、集落の発展状況のような、地理学上、一つの説明に資するのを目的とする写真である。>

 北尾の写真に対する姿勢は「近畿景観」をはじめ、『近畿・山陰の風物』(昭和14年刊、大阪鉄道局)の写真においもみられ、ここでも、単なる風景写真や観光写真とは違ったものになっている。

◇友禅(京都桂川)
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◇姫路城
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◇奈良公園
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◇大阪中之島
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 尚、『近畿・山陰の風物』は、装丁が持田卓二、扉(下図)が川西英、挿絵が鍋井克之という豪華な顔ぶれで、北尾鐐之助も「車窓景観」と題して紀行文を載せている。
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by suzu02tadao | 2012-03-08 12:55
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