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1920~30年代を中心に、あれこれと・・・
by 大阪モダン
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「神戸みなとの祭り」 宇崎純一

◇第4回 神戸みなとの祭り 【1936(昭和11)年】絵葉書
「神戸みなとの祭り」 宇崎純一_c0239137_13391859.jpg

 「神戸みなとの祭り」は1933(昭和8)年より開催されており、前回とりあげた小磯良平作のポスターがよく知られているが、上図の絵葉書は宇崎純一(うざき すみかず、1889 - 1954)のものである。
 これは「大阪の夢二」と呼ばれた純一の典型的な画風ではないが、例えば市章山の表現など、下手をすれば陳腐になるところを、さらっと上手く描いており、また全体的にも洒落た味をだしていて、当時の人気と実力の程がうかがえる。

 宇崎純一については、2010年に大阪市立中之島図書館で展覧会が開催された時には、私はあまり関心はなかったのだが、その後、この絵葉書を手に入れてからは興味をもつようになり、先日も、堺市立文化館で開催されている「大阪の夢二 宇崎スミカズと華やかな大阪出版文化」展に行ってきたのだった。

 パンフレットの案内文の中で<純一は当時道頓堀にあったカフェ「パノン」や弟祥二の経営する「波屋書房」を通じて、文士や画家、俳優、若き文学青年たちとの交流があり、大阪の出版文化の一翼を担っていたのは確かです。>とあるように、藤沢桓夫の同人雑誌『辻馬車』を出版したのは「波屋書房」であった。
 宇崎純一については、藤沢桓夫も『大阪自叙伝』のなかでもふれているが、談話としてまとめられた『回想の大阪文学』では次のように語っている。

 <宇崎純一さんは絵かきさんでね、丸の中にカタカナでスという署名でした。いわゆる子どもの自由画みたいなちょっとしたペン画をかいていました。純一絵手本みたいなもの、これはずいぶん売れたんですよ。それから高島屋とか商業的な雑誌なんかに広告が載るでしょう。それにちょっとした絵をかいたりね。何かいわゆる大阪のイメージを自分でまとっておられたのじゃないかと思うんですね。この人が店の仕事をしているのを一度も見たことがないですよ。そしていつでも松竹座の向かいにあったライオンという喫茶店で、昼間、商家の旦那衆でいて、やっぱり芸術家であるような人や、ちょっと歌舞伎の脚本を書く人なんかが集まっているその中で、のらりくらりしているんですよ。それで弟はバイオリンを弾いているわけでしょ。それこそ芸術生活をしている人だったのと違うかな。>

 また会場に展示されていた「パノン」(キャバレー・ヅ・パノン)での仮装会での写真には、純一とともに、画家の住田良三、足立源一郎、赤松麟作、松田種次や歌人の段谷秋比登などが奇抜な仮装で写っており、当時の大阪には華やかな文化交流があったことがうかがい知れる。
by suzu02tadao | 2012-08-12 18:25
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