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1920~30年代を中心に、あれこれと・・・
by 大阪モダン
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祝盃の歌 Stein Song

◇楽譜「祝盃の歌」:1930(昭和5)年
祝盃の歌 Stein Song_c0239137_14213762.jpg
 この「祝盃の歌」は、ドイツ民謡および世界的スタンダードソングの「Stein Song」を日本語でカヴァーしたもので、現在では「乾杯の歌」としてよく知られており、その昔のNHK紅白歌合戦のオープニングテーマ(歌手入場曲)としてもお馴染みの曲でもあります。
 表紙の絵の作者は不明ですが、以前に取りあげた楽譜「ミス・ニッポンの歌」と同じように、1930年頃のエロ・グロ・ナンセンスの世相をよく表しています。

 ちょうどこの頃には、小野佐世男も風刺漫画誌『東京パック』や『カクテール』などを足場に活躍しはじめるのですが、この当時の画家や漫画家は小野に限らずロートレックやジョージ・グロスの影響を受けており、それらの誌面では、プロレタリア美術とエロ・グロ・ナンセンスの漫画が共存していたのでした。

◇「恋を占う女」(カクテール誌)八木原捷一(『漫画100年』より)
祝盃の歌 Stein Song_c0239137_14231092.jpg

 当時は宮本三郎も下図のような絵を描いており、他にも古賀春江、東郷青児、向井潤吉なども風刺画を描いていたようです。

◇「機械と階級」(東京パック)宮本三郎(『漫画100年』より)
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◇「農村の暴状」柳瀬正夢(『漫画100年』より)
祝盃の歌 Stein Song_c0239137_14241523.jpg
 ジョージ・グロスについては、柳瀬正夢は評伝を書くほど傾倒していたようですが、昭和8年の『モダン常識辞典』(実業之日本・附録)の<世界美術傾向>の中で、
 <さしも誇つた仏蘭西画壇は頂上から漸くドイツとロシアへその勢力を奪はれつゝある>として、フランスの作家では、ピカソ、マイヨール、ローランサン、マチスなどを挙げていますが、ドイツではジョージ・グロスを挙げており、
 <暴露的な絵を好んで描き、プロレタリア美術の元祖とも云ふべき人>と解説しています。

 また、この『モダン常識辞典』では、<漫画時代>と題して当時の漫画家の活躍ぶりを紹介しています。

 <帝展でも池部鈞の漫画が美術として待遇されてゐる。最早卑俗な戯画ではなく、一個の独立した美術である。漫画家の収入を覗いて見ると、岡本一平(五百円位)田中比左良(千五百円位)和田邦坊(千円位)川間くにを(七百円位)堤寒三(七百円位)細木原青起(七百円位)人を笑はせて、この位入れば大臣なんて命がけな仕事は損である。>

 更には、商業美術家や挿絵画家も稼いでいたようです・・・

 <商業美術の多田北烏(三千円位)挿絵家では岩田専太郎(千五百円位)林唯一(九百円位)齋藤五百枝(八百円位)名もなき一寸した画家でも百円は稼いでゐる。>

◇「非常時のエスプリ」ジョージ・グロス(『犯罪公論』昭和8年8月号:口絵)
祝盃の歌 Stein Song_c0239137_14273319.jpg

by suzu02tadao | 2014-02-01 14:30
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