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寺町二条「かぎや茶寮」 九月

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 『時世粧』の第三号のグラフを、一頁からゆっくり繰ってゆくと、三頁に次ぎのような詩を見出した。

  黄玉(トパアズ)の露のしずくを?
  いいえ 奥さん
  鎰屋(かぎや)のささ舟は
  あなたのお口へ
  美味を運ぶ
           堀口大学

 この詩に写真が付いている。古い見覚えのある鎰屋(かぎや)の窓際に、切子硝子の菓子皿にたぶんこの詩にある「ささ舟」が盛られてある。~(略)~
 私が「古い見覚えのある」と書いたのは、私がこの京都の鎰屋の存在を初めて知った今から二十三年前の秋、この寺町二条角にある鎰屋に、黒谷の友人の寓居から友人と毎晩ほど通って、菓子を食い紅茶を飲みながら、鎰屋の窓から寺町通を眺めながら、青春と詩を飽きずに語ったことがあるからである。


 これは以前に紹介した『時世粧 ZISEISO第四号(昭和10年10月15日発行)の宇野浩二「秋の京都の思い出」の書き出し部分です。
 この文章の後で、直木三十五を先頭に菊池寛や芥川龍之介などが一団となって京都東山を歩いてから鎰屋で休む場面になるのですが、更にその後は次のように続きます…

 私は鎰屋を思い出すと、昭和六年の夏、初めて読んだ、梶井基次郎の『檸檬』という小説の次ぎの一節を思い出すのである。
 「寺町通はいったいに賑かな通りで――と言って感じは東京や大阪よりはずっと澄んでいるが――飾窓の光がおびただしく街路へ流れ出ている。それがどうしたわけかその店頭の周囲だけが妙に暗いのだ。もともと片方は暗い二条通に接している街角になっているので(中略)裸の電燈が細長い螺旋棒をきりきり眼の中へ刺し込んでくる往来に立って、また近所にある鎰屋(かぎや)の二階の硝子窓をすかして眺めたこの果物店の眺めほど、その時どきの私を興がらせたものは寺町の中でも稀だった。」

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 昭和13年9月の鎰屋(かぎや)「季節 御菓子の栞」です。

尚十人様以上のテーパーティ等の御集会の設備も ございますれば御利用お願ひ申上げます
 老舗の和菓子店がアンテナ・ショップとして洋菓子店やカフェなどを展開している例は最近では珍しくありませんが、まさに鎰屋はその先駆けだったようです。
 
 それにしても、大正・昭和はなんてハイカラでモダアンだったのでしょう…!

 なお、今年の中秋の名月は10月4日とのこと…

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by suzu02tadao | 2017-09-16 07:00 | Comments(0)
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