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趣味の近代層 <ガウディとコルビュジエ>昭和5年3月13日発行の『趣味の近代層』は前年の「アサヒグラフ」に掲載された「趣味講座」の記事を集めたものですが、その当時、前衛美術家として活躍していた仲田定之助(1888-1970)は「今日の建築」を載せています。 建築は時代の鏡であります。建築は時代精神を反映します。そして今日の新建築は今日の時代精神を映像します。ですから今日の新建築は活きています。 ~(略)~ 今日の新建築は旧来の型を模倣したり、形式的に応用したりする事の代りに、建築をもっと新しい立場から本質的に、健康な考え方をして、真面目に取扱うようになりました。 その新建築傾向を大別して、必要から来る合理的構造と、冥想的美学の立場からの作品とに分類することが出来るようです。 仲田定之助は1922年から1924年にかけてドイツに留学、バウハウスを訪問し、帰国後1925年に美術雑誌に紹介記事を書き、これが日本における最初のバウハウスの本格的な紹介とされています。 留学中には、他の様々な芸術運動にも触れ、多くの資料を日本に持ち帰りましたが、冒頭に挙げたガウディ(※ゴーヂと表記されていますが…)のサグラダ・ファミリアの写真もその中の一つと思われます。 サグラダ・ファミリアについては、 南国的幻想によって出来た大規模な建築で、超人的なそして宗教的な敬虔な力を感じます。しかし形態はゴシックに追従したような冥想的な美学的な作品です。 として、必要から来る合理的構造を持つコルビュジエの建築の方を評価しているものの、既にこの時期に新建築の傾向としてガウディを例にあげていることについては注目すべきかと思われます。 この本の中では他に、分離派建築会に参加し、表現主義からモダニズムの作品を手掛けた建築家の蔵田周忠(1895-1966)が「室内工芸の尖端を見る」で、コルビュジエの作品やブロイヤーのパイプ椅子を取りあげており、また、仲田定之助や杉浦非水と共に『現代商業美術全集』を編集した、日本のグラフィックデザイナーの草分けの一人でもある濱田増冶(1892-1938)は「新興のグラス芸術」で、ミース・ファン・デル・ローエやグロピウスの作品を紹介しています。 『趣味の近代層』が発行された昭和5年は、前川國男がコルビュジエの事務所に前年入所した坂倉準三と入れ代わるように帰国した年で、まさに日本のモダニズム建築の歴史が本格的に始まった年と言ってもいいと思われます。 時代の大きな流れとしては合理性・機能性を重視したモダニズムが主流になりつつありましたが、この本の「はしがき」の冒頭では次のように述べています。 一口に趣味というと、兎に角、骨董的な懐古的な興味に対象されていたけれども、最近では非常にモダン化して、より尖端的に、より探美的に、より猟奇的に、尖鋭化し分類化されてその分野を広げて来ました。従って、先人達の遺した過去の文化や習俗にも、新しい解釈が試みられなければならなくなり、科学や芸術も、現代機械文化の爛熟と共に、その境界線を突破して、趣味の分野に氾濫するようになりました。 こうした広汎な趣味の近代層を縦断して眺めたのが本書であります。
by suzu02tadao
| 2017-11-24 07:00
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